宮城県北・加美町の新たなランドマーク
建築概要
東側道路面のファサード.ヨーロッパ調でありながら周辺と調和する景観.
宮城県加美郡加美町南町186番1
木造2階建て
380.89㎡ (114.98坪)
築約100年の蔵のリノベーションです。
元は昭和初期に建てられた醤油蔵と言われ、昭和63年からは縄文芸術館として旧中新田町(現加美町)が開設した建物です。 縄文芸術館は令和元年末で閉館され、今回、地元加美町の染織家が町より譲り受け、新たに主に東北の工藝作家とその仕事を紹介・発信する工藝ギャラリーとしてリニューアルオープンしました。
建物は、途中何度か用途に合わせて改修されているとは言え、ベースとなる構造体は約100年前のものであり、内外の各所には築年数なりの傷みも見られ、今回の工事では主に外部周りを中心に、基本的な性能を確保することを優先しました。 雨漏りも見られた既存の屋根瓦を撤去しガルバリウム鋼板の屋根とすることで、防水を確実なものとして、同時に建物の大幅な軽量化を図りました。 外壁はひび割れをエポキシ樹脂で注入処理した上で再塗装を施し、木製だった開口部には断熱性に優れた樹脂サッシを入れました。 内部も可能なカ所には断熱材を充填し、新たな仕上げを施すことでギャラリーに相応しい落ち着いた雰囲気になりました。
外観の形状的にはほぼ手を加えておりませんが、屋根に尖塔を設けて正面に特徴的な開口部を加えることにより、染織家が当初からイメージしていたヨーロッパの田舎町に佇む教会の雰囲気を醸し出し、印象的でありながら周辺に溶け込むデザインになったと感じられます。
染織家の言葉より
この場所がこれから東北発の工藝にまつわる活動の聖地となるべく、宮城県北・加美町の新たなランドマークとして皆様に末永く愛される工藝ギャラリーになりますよう、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
建物全景.蔵の形状を生かしつつ、尖塔を設ける事により印象を一変させた.屋根は瓦葺からガルバリウム鋼板へ.正面と南側の下屋部分は、佐々木信平氏による雄勝スレート葺き.
ギャラリー内部空間.基本的な骨格は既存のまま.奥のアーチ状の西側通路は空間に対してシンメトリーになるように位置を整えた.左右の展示棚は既存を生かした.
露出するトラス状の小屋組み.基本的には手を加えていない.細身の梁が一間ピッチで並ぶ.
尖塔の下部.尖塔には床は無く、階段上部のトップライトとしても機能する.アイアンクラフトのオリジナル照明.
2階ギャラリーの一角.東面の三連の窓が内部空間をも印象的にしている.
2階階段周り.トップライトから明かりが落ちる.
2階ギャラリー回廊の窓.樹脂サッシ+木製の二重窓としている. 木製窓にはハンドメイドのシンプルなステンドグラスが入り、外部への視線を調整する.
既存. 所々雨漏りも見られた.
既存.北西部は特に傷みも激しかった.
既存.改修前の、空間に対し 非シンメトリーな西側通路.
既存.1階北西部の収蔵庫. 最も傷みが激しかった.
既存.瓦葺きの屋根.
今回下屋を葺いた雄勝スレート.
工事中の現場.
工事中.吹抜けは梁に足場を渡した.
工事中.尖塔の原寸図と部分部材.
工事中.屋根は急勾配で屋根足場を敷設した.
工事中.東面の窓は現場製作の木製.
工事中.外壁ひび割れのエポキシ樹脂注入.